家を売るとき、多くの人が「できるだけ高く、できるだけ早く」という理想を思い描きます。けれども実際には、うまくいったと感じる人より、「もっとこうしておけばよかった」と悔やむ人のほうが多いのが実情です。なぜなら、家の売却は一度きりの経験であることが多く、情報も経験も不足したまま進めてしまうことが多いからです。
とくに問題になるのは、知らず知らずのうちに「やってはいけないこと」をやってしまっているケースです。これには、大きな失敗ではなくても、手間や費用、納得感に影響する「小さな後悔」が数多く含まれています。たとえば、査定額だけで業者を決めてしまったり、契約内容をよく読まずに進めてしまったり。
この記事では、よくある10の失敗パターンを整理し、それをどう避けるかを具体的に解説していきます。「失敗しないこと」が結果的に成功への近道になる——それが家を売るときに知っておくべき、最も大切な考え方です。
「高い査定=高く売れる」わけではない?
家を売るとき、多くの人が最初に行うのが「不動産会社への査定依頼」です。そして、出てきた査定額を比べて、「ここが一番高いからお願いしよう」と決める方も少なくありません。しかし、これは思わぬ落とし穴です。査定額が高いからといって、実際にその価格で売れるとは限らないからです。
査定には、近隣の成約事例や土地の条件、建物の状態など、さまざまな要素が反映されますが、なかには契約を取りたいがために、あえて相場よりも高い数字を提示する業者も存在します。結果として、売却活動を始めても反応が鈍く、数か月経ってから大幅に価格を下げることになった、という例は珍しくありません。
さらに見落とされがちなのが、「査定額の根拠」です。丁寧に根拠を説明してくれる会社もあれば、ざっくりとした資料だけで済ませる会社もあります。大切なのは、その査定額が「売れる価格」か「見せかけの価格」かを見極めることです。
信頼できる会社であれば、相場や近隣の売却実績をもとに、無理のない価格帯を提案してくれます。見かけの数字に振り回されず、自分にとっての現実的なゴールを見据えて判断する姿勢が大切です。
「売りたいときが売り時」ではない?
「そろそろ住み替えたい」「子どもが独立したから広すぎる」──こうした理由で家を売りたくなることは自然な流れです。しかし、売りたい気持ちだけでタイミングを決めてしまうと、市場の動きとかみ合わず、売却に時間がかかることもあります。
不動産市場には、売りやすい時期とそうでない時期があります。たとえば、年度の切り替えや異動・転勤が多い春先は、買い手の動きが活発になります。一方で、年末年始や長期休暇の前後は、内見希望も少なくなりがちです。こうした動きを無視して売り出してしまうと、「そもそも問い合わせすら来ない」という状況に陥ることもあります。
また、周辺地域の売り出し物件数や、金利動向などの外的要因も影響します。すでに近隣に似た物件が多く出ていれば、価格を下げないと見てもらえないかもしれません。逆に供給が少ない時期を狙えば、有利に交渉を進められることもあります。
つまり、「自分の都合だけで判断しないこと」がポイントです。不動産会社と相談しながら、今が動くべき時期なのかどうかを見極める視点が求められます。売却のスピードだけでなく、手取り額にも影響するため、焦らず慎重に判断したいところです。
「内見は形式だけ」と思っていませんか?
家の売却で意外と軽視されがちなのが、買い手による「内見対応」です。売主にとっては「建物はそのまま見せればいい」と思いがちですが、買い手にとっては「初めてこの家を訪れる大切な判断の場」。その印象は、売却成功の可否を左右する重要なポイントになります。
たとえば、室内が暗くて空気がこもっていたり、生活感が強く残っていたりすると、それだけで「なんとなく居心地が悪い」と感じさせてしまいます。一方で、明るく整理整頓された室内、換気の行き届いた空間であれば、購入後の生活を前向きに想像しやすくなるものです。
特別なリフォームを施す必要はありませんが、事前に掃除を徹底し、荷物はできるだけ減らしておくと印象がぐっと良くなります。玄関や水回り、照明の明るさなど、日常生活の基本的な要素こそ、買い手の目に留まりやすい部分です。
また、内見時の対応も大切です。無理に案内したり、売り込みをしすぎたりすると、買い手が引いてしまうこともあります。見学中はできるだけ距離を取り、必要な説明は不動産会社に任せるといった姿勢が、安心感を与えることにもつながります。
売る側としては「現状をそのまま見てもらえばいい」という気持ちになるかもしれませんが、買う側は「自分の家になるかもしれない空間」として見ています。内見対応は、単なる手続きではなく、家の魅力を伝える最後のチャンス。その意識を持つことで、成約に一歩近づける可能性が高まります。
「手元に残る金額」を最後まで把握していますか?
家を売るとき、多くの人は「いくらで売れるか」に意識が向きがちです。しかし実際に重要なのは、「最終的に手元にいくら残るか」という視点です。売却価格からさまざまな費用や税金が差し引かれるため、想定していた金額よりも少なくなるケースは少なくありません。
代表的な費用としては、まず不動産会社への仲介手数料が挙げられます。これは「売買価格×3%+6万円(消費税別)」という上限が法律で定められており、数十万円規模になることもあります。さらに、抵当権の抹消や登記手続きには司法書士報酬が必要で、こちらも忘れがちな出費です。
また、売却益が出た場合には「譲渡所得税」という税金が課されます。これは、購入時より高く売れた場合の利益に対してかかるもので、長期保有か短期保有かによって税率も異なります。さらに、引越し費用や住宅ローンの残債精算、測量費用など、状況によって発生する諸費用も見落とせません。
問題なのは、こうした費用を十分に把握しないまま売却を進め、「思っていたより手元に残らなかった」と後悔するケースが少なくないことです。売却のタイミングや価格設定を検討する際にも、これらを含めた「純利益」をベースに判断することが重要です。
信頼できる不動産会社であれば、事前に必要な費用や税金の見通しを丁寧に説明してくれます。不明点を放置せず、どこまでが自己負担になるのか、どのタイミングで支払いが発生するのかを具体的に確認しておくことが、納得の売却への一歩です。
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「正しい知識×誠実なパートナー」で失敗の芽を摘む
家の売却は、思い切って動き出す前にこそ、冷静な判断と丁寧な準備が求められます。失敗の多くは、「知らなかった」「つい流れで進めてしまった」といった小さな判断ミスの積み重ねから起こります。それらは事前に知っておけば、防げるものばかりです。
売却に関わる手続きや費用、業者選びのポイントなど、不安なことがあれば一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけておくことが大切です。とくに地域事情に詳しく、無理な売り込みをせずに寄り添ってくれる不動産会社の存在は、安心して進めるうえで大きな支えになります。
迷ったときは、まず小さな相談から始めてみてください。



